帰ってきた海難記

帰って来ました!

オンデマンドで本を出す

久しぶりにはてなに帰ってきました。2009年まで、はてなダイアリーで【海難記】というブログをやっていた。こちらは理由ありて完全撤退し、そのあとにもはてなブログでなにかやっていたはずなのだが、ログインしようとしてみたら消えていた。なので、旧ブログ名で暫定的に再開である。

というのも本日12月17日の日付で「編集とライティングにまつわるAdvent Calendar」なるものに登録してしまい、しかしそのために書く個人ブログが見当たらないという事態になったからだ。継続的に書くかどうかはともかく、そういうわけで「帰って」きました。はてな記法もすっかり忘れてしまいましたが。

さて、書くテーマは決まっていて、まもなく久しぶりの単著(といってもインタビュー集なので実質的には共著)として『数理的発想法ーー”リケイ”の仕事人12人に訊いた世界のとらえかた、かかわりかた』という本が出るので、宣伝せよとの担当編集者Kからのお達しがあったからである。

しかもこの本、オンデマンド印刷と電子書籍でしか出ない。なのでプロモーションはウェブに限るというわけで、この機会をお借りした次第である。

でもさすがに本を宣伝するだけでは「編集とライティングにまつわる」というテーマにふさわしくないので、この本を校了するまでに感じたことを書いてみたい。

もともとこの本にまとめた原稿は、某電機メーカーの関連会社のPR誌に11回にわたり連載したものだ。印刷版のPR誌だけでなくウェブでも公開されており、いまでもHTMLとPDFでも手に入る。つまりタダで読みたければ、読めるコンテンツなのである。

本にまとめるにあたっても、インタビュイーに発言部分を確認していただいたほかは、本文にはそれほど手を入れていない。ただし、12人(11回だが、2人が登場する回が一つある)の方々の職業や仕事のテーマに応じて、構成を一新した。作家・マンガ家を「書く、描く、物語る」として第1章に、エンジニア系の研修者を「技術をデザインする」として第2章に、技術で「本」をつないでいく人たちを「本と、デジタル」として第3章に、そして純粋に「科学者」と呼べそうな人たちを「科学者たち」として第4章に、3人ずつ配置した。

連載時にはここまでキッチリと構成を考えて進めていたわけではなく、すでに面識はあったがお話をじっくり聞いたことがなかった人にも、どうしても話を聞いてみたくなった未知の人にも、等しく声をかけた。その結果を11回12人ぶん集めて「編んで」みたところ、思いもかけない面白い本に仕上がった。仕上がったと思う、自分では。12名のお名前は以下の目次(ゲラ段階)をご覧いただきたい。

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「本」とはなんだろう、という問いをこの十数年、ずっと抱えてきた。紙かデジタルか、ということは本質的な問題ではないことも、わかってきた。「本」と「本でない」コンテンツの差とは、ようするに構造があるかないか、である。今回の『数理的発想法』の場合も、連載をただ並べたものは「本」ではない。HTML版やPDF版をウェブで公開にしたままでも、オンデマンドと電子書籍で「商品」としての本をあらたに出すことに意味があるのは、そのように配列され、章のタイトルを与えられることで、個別のインタビュー記事にあらたな文脈ができるからだ。自分でもあらためて読んでいろいろ発見があったので、すでにウェブやプリーペーパー版をお持ちの方も、そのように読んでくれるとうれしい。

この本は自分にとっては、大昔に『季刊・本とコンピュータ』という雑誌でやった連続インタビューに数名を追加して単行本化した『〈ことば〉の仕事』(原書房)の姉妹編である。こちのときは「文系」の人ばかりを取材したが(Amazonだとインタビュイーの名が出ないので列挙すると、小熊英二水越伸山形浩生、斎藤かぐみ、恩田陸佐々木敦豊崎由美堀江敏幸の8名)、併せて読むといろいろと面白いかもしれない。

『数理的発想法』が発売になったら、またここでなにか書いてみたいが、今日はこんなところで。